10月下旬、ホラーとAIにまつわる2つのニュースが続けて発表されました。ひとつは、『呪怨』シリーズに関わった三宅隆太監督が、AIを使って作った新作を11月の映画祭で初上映するというもの。もうひとつは、最長10分の映像をひと続きで生成できるとうたうAI動画モデル「Model 1」の発表です。
「作り手」と「道具」の両方が動き始めた今、ホラー短編はAIで作れるのか。この記事では、2つのニュースを手がかりに考えてみます。
Jホラーの作り手がAI映画祭へ。何が起きているのか
米国アカデミー賞の公認映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)2026 Autumn」が、10月22日に生成AI作品の特集を発表しました。その目玉が、三宅隆太監督の新作『PSY DIVER -Episode 1-』の世界初上映です。
ただし、この作品はホラーではありません。人の潜在意識に潜るという題材のSFスリラーで、AI制作プラットフォーム「TOPVIEW」を使って作られました。「見えないもの」を描いてきた作り手が、心の内側という題材をAIで映像にした点は、ホラー好きとしても気になるところです。
主な日程は次のとおりです。
| 内容 | 日程 | 場所 |
|---|---|---|
| 映画祭の会期 | 11月5日〜22日 | 東京+オンライン |
| 会場上映 | 11月5日〜8日 | 東京都写真美術館、kino cinéma新宿 |
| 三宅監督のトーク(生成AIと物語) | 11月8日 | kino cinéma新宿 |
| オンライン配信 | 11月9日〜22日 | オンライン |
同じ特集では、シンガポールや中国のAI作品の初上映や、実写とAIを組み合わせたシリーズも予定されています。AI映像はもう「実験」ではなく、映画祭で特集が組まれる一つのジャンルになりつつあります。
「10分を一度に生成」は、ホラーの“間”を表現できるのか
10月20日、VideoGen社が自社初の動画モデル「Model 1」を発表しました。これまでのAI動画は数秒ごとに作って経ぐのが基本でしたが、Model 1は最長10分の映像を複数カットでまとめて作れるとしています。
発表された主な特徴は次のとおりです。
- テキストや画像から生成でき、参照画像は最大16枚まで使える
- AIが脚本、セリフ、カット割り、テンポを計画し、キャラクターや舞台の見た目をシーンをまたいでそろえる
- 映像と音声を同時に生成し、破綻したカットを自動で作り直して編集まで行う
- クリエイター向けに総額100万ドル分の無料クレジットを募集中
ただし、現時点では一部のパートナー向けの限定公開で、一般公開は安全性のテストを経てからです。料金もまだ確定していません。
ホラーという観点で注目したいのは「一貫性」と「長さ」です。ホラーの怖さは、何も起きない時間や、じわじわ高まる不安から生まれます。数秒のクリップを経ぐやり方では、この“間”を組み立てるのが難しかったのです。
一方で、AIがテンポまで決めると、「分かりやすい」編集に寄ってしまう可能性もあります。長い沈黙や、画面の端に何かが映り込むだけのカットなど、Jホラーらしい「何も起きない怖さ」を出せるかどうかは、一般公開後に確かめたいポイントです。
AIでホラー短編を作るなら、人が担うべき3つの仕事
AIが映像を作れるようになっても、ホラーの怖さを左右する部分は人が決める必要がありそうです。私は次の3つだと考えています。
- 「見せないもの」を決める AIは頼まれたものをできるだけはっきり見せようとします。幽霊をどこまで映すか、何を黒く潰すかを決めるのは、演出する人の仕事です。
- “間”の長さを調整する 生成されたテンポをそのまま使うのではなく、沈黙を伸ばしたり、驚かせる瞬間をずらしたりする編集で、怖さは大きく変わります。
- 音で話を引っ張る ホラーの半分は音とも言われます。自動で付いた音に頼り切らず、「ここで音を消す」「ここだけ物音を強める」といった判断が作品の印象を決めます。
つまり、AIに任せられるのは「絵を作ること」で、「怖がらせ方を決めること」はまだ人の仕事だというのが今の答えです。
まとめ
Jホラーの作り手がAI映画を発表し、長い映像をまとめて作れるAIも登場しました。ホラー短編をAIで作るための条件は、確実にそろい始めています。
それでも、怖さを生むのは「何を見せ、どれだけ待たせるか」という演出の判断です。11月の映画祭で三宅監督が生成AIと物語について何を語るのか、そしてModel 1が一般公開されたときに“間”をどこまで扱えるのか。引き続き追いかけていきます。
出典
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本記事のアイキャッチ画像と挿絵は、生成AI(Gemini、ChatGPT、Veo3、Nano Banana2など)で作成したイメージです。実在の人物、作品、公式の素材ではありません。
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